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企画展 死と再生の物語
── 中国古代の神話とデザイン ──
泉屋博古館東京にて、企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」を2025年6月7日(土)より開催いたします。高度な文明が発達した中国古代では、すぐれた技術によってさまざまな文物がつくりだされ、それらには現代の眼にも斬新で刺激的なデザインの数々がほどこされました。本展覧会では、泉屋博古館(京都東山・鹿ヶ谷)所蔵の青銅鏡の名品を中心として、中国古代の洗練されたデザイン感覚、その背景となった神話や世界観をご紹介していきます。あわせて、2021年・2023年に泉屋博古館で開催された「泉屋ビエンナーレ」出展作品の中から選りすぐりの作品を東京でご紹介します。
重要文化財《画文帯同向式神獣鏡》中国・後漢末~三国(3世紀) 泉屋博古館
展覧会概要
高度な文明が発達した中国古代では、すぐれた技術によってさまざまな文物がつくりだされ、それらには現代の眼にも斬新で刺激的なデザインの数々がほどこされました。わたしたちの感覚からはかけ離れているようにも思えるこうしたデザインは、いったいどのような思想のもとに生みだされてきたのでしょうか。
本展覧会では、泉屋博古館(京都東山・鹿ヶ谷)所蔵の青銅鏡の名品を中心として、中国古代の洗練されたデザイン感覚、その背景となった神話や世界観をご紹介していきます。そのうえで本展覧会では「動物/植物」「天文」「七夕」「神仙への憧れ」という主に4つの観点から、デザインの背景を読み解いていき、さらには日本美術に与えた影響についてもご紹介いたします。
あわせて、2021年・2023年に泉屋博古館で開催された「泉屋ビエンナーレ」出展作品の中から選りすぐりの作品を東京でご紹介します。
みどころ
1. 世界屈指と称される住友コレクションの青銅器・青銅鏡から名品を選りすぐって公開。
中国古代のすぐれたデザイン感覚を心ゆくまでお楽しみいただけます。
2. デザインの背景にある物語、神話を丁寧に解説し、中国古代のデザインに秘められた謎にせまっていきます。
はじめはとっつきにくかった中国美術も、背景知識とともに見ることで一気に親しみやすく!
3. 中国古代に生まれた物語・デザインが、日本美術に受け継がれる様にも注目!
日本でもよく知られた七夕伝説も題材に取り上げ、季節感もありつつ、悠久の歴史を感じられる構成となっています。夏休みの自由研究にもぜひ!
4. 展覧会の関連行事も充実。
プラネタリウムとのコラボなど、これまでになかった新しい形で中国美術に親しむイベントを各種ご用意しています。近隣施設とも連携しながら、めずらしいテーマの展覧会を盛り上げていきます。
5. 京都本館のリニューアルにあわせ、新たな青銅器グッズも登場!
ほかでは手に入らないオリジナルグッズをゲットして、ぜひSNS等で発信してください。
展示構成
中国古代では空想上、実在のさまざまな動物たちがデザイン上に登場します。こうした動物たちは単なるモチーフではなく、天と地をつなげる媒介としての性質が与えられていました。この性質がベースとなって、鏡や画像石といった当時の文物の上で重要な役割を果たすようになります。そこには青々と生い茂る植物もあらわされ、「世界樹」の思想にも通ずるデザインが、古代人々の信仰する生命力の象徴として、動物たちとともに独創的な世界観をつくりあげていきます。
当時の人々にとっては、天文の知識は生活上に必要であるだけでなく、世界で起こるさまざまな出来事を前もって知るための技術でもありました。こうした性質は、その出現がよい出来事の前触れとされた獣たち──瑞獣──と関連しつつ、デザイン上にも表現されるようになります。日本でもよく知られた四神なども、こうした古代の天文学と密接にかかわるモチーフでした。
天文にかかわる物語としては、七夕伝説も外すことができません。牽牛と織女の恋物語は、不老不死をつかさどるとされる仙女、西王母とも関係しながら、死と再生をめぐる当時の人々の思いやイメージを反映していました。現代の日本にまで脈々と受け継がれている七夕伝説の源とイメージの変遷を、中国古代の鏡や画像石、さらには日本の近世・近代絵画も交えてご紹介します。
漢代では西王母の信仰が爆発的に流行したことが歴史書にも記されています。こうした傾向は不老不死の神仙に対する憧れが高まり、神仙思想が社会のなかで広まっていったことと関係しますが、そのトレンドは鏡の紋様にも大きく影響を与えています。さまざまな神仙があらわされ、所持した者に現世的な利益をもたらすことを銘文に謳う神獣鏡は、日本列島にも数多くもたらされ、古墳にも副葬されるようになります。重要文化財7面を含む館蔵の名品を中心に、その過程を追いかけます。
第1章 天地をつなぐ動物たち
中国古代の文物のデザインには、さまざまな動物たちが登場します。虎や象など、実在の動物から、龍や鳳凰など空想上のものまで、そのすがたかたちもバリエーション豊かに描き出され、見る者の眼を楽しませてくれます。
こうした文物上にあらわされた動物たちは、単に自然界の隣人というだけでなく、ある重要な役割が与えられていたと考えられます。それは天と地をつなぐ媒介としての役割であり、それゆえに墓の副葬品や死者をまつる場において、きわめて重要なモチーフとしてあつかわれていたのです。
中国皇帝の象徴としても知られる龍は、もともとはこの天地をつなぐ性質が重視されており、天に昇って降雨の恵みをもたらしたり、天界へと昇っていく死者の魂を守護したりすることを願って、さまざまな文物のうえに表現されました。フクロウ・ミミズクをさすとされる鴟鴞も、おそらくは夜行性の猛禽類という性質が注目され、死後の世界とかかわりの深いモチーフとしてあつかわれていました。
安寧な死後の世界に到達するためには、天に通ずることが必要とされた中国古代、そのシンボルともいえる動物たちを導き手に、デザインに込められた世界観を読み解いていきましょう。
第2章 聖なる樹と山
世界各地の神話では、世界の中心に生える巨大な樹木、あるいは険峻な山が、天と地をつないでいるという発想がしばしば見られますが、中国古代にもそれを思わせるようなデザインが文物のなかに表現されています。
世界樹の思想に通ずるものとして知られているのが、いわゆる扶桑の樹をめぐる伝説です。扶桑は東方のかなたに生ずる巨樹で、中国古代では10個存在すると考えられた太陽は、この扶桑の樹から順に天に昇っていき、そして戻ってくると考えられていました。西方のかなたには、大地の中心とされる崑崙山がそびえ立ち、死者の魂はここを昇っていくことによって、天界へと通ずることができると信じられていました。
こうした扶桑や崑崙山をあらわしたとされる文様は、画像石や鏡などの文物に見ることができます。特に画像石は死者をまつる場を飾るためのものであり、そうした場にこのような文様があらわされていたのは、天に通ずるという発想とも関係しつつ、まさに死と再生を象徴するモチーフとしてとらえられていたためでしょう。
この章では聖なる樹と山に着目し、中国古代の人々がつくりあげた独創的な世界観の一端をうかがいます。
第3章 鏡に映る宇宙
日中に天を見上げれば、太陽が燦々と輝き、夜に天を見上げれば、星々が瞬いて月は静かに大地を照らします。こうした天文に関する知識は、生活のリズムをつくりあげる暦のうえで不可欠であるばかりでなく、中国古代の人々にとっては、世界で起こるさまざまな出来事を前もって知るための技術でもありました。こうした性質は、その出現がよい出来事の前触れとされた獣たち──瑞獣──と関連しつつ、デザイン上にも表現されるようになります。
いまわれわれがよく知る星座は西洋で生み出されたものですが、中国古代では、これとはかなり異なる星座が考えられていました。「淳祐天文図」は南宋時代の石碑の拓本ながら、中国古代の天文をいまに伝えています。漢代に流行した「方格規矩四神鏡」には、天地の象徴であるTLV字とともに、東西南北の方角に四神──青龍・白虎・玄武・朱雀──の文様が配され、一面の鏡のなかに中国古代の宇宙観を凝縮したデザインを示しています。
太陽や月、星々は日夜あらわれては姿を消し、そしてふたたび変わらぬ姿で出現します。規則的な運動を繰り返すそのあり方は、死と再生を体現するものとして人々の心をとらえ、デザイン上にも特別な意味をもって表現されたのでしょう。本章ではこうした天文とデザインの密接な関係について詳しく見ていきます。
第4章 西王母と七夕
西王母は崑崙山に住まうとされた仙女で、もともとは半人半獣の恐ろしい姿として文献に登場しますが、漢代では美しい女性の姿で画像石や鏡の文様に描かれるようになり、近世絵画においても吉祥の画題として好んで描かれました。
西王母は不死の仙薬をもつとされ、その仙薬を兎たちが搗く図像は画像石などにもあらわされています。しかし一方で、西王母は死や疫病をつかさどる危険な神としての性格もあったと考えられており、元来は二面性をあわせもつ女神であった可能性があります。
その西王母と関連しつつ展開されるのが牽牛・織女の物語であり、ふたりが7月7日にのみ会うことができるという七夕の伝説は、日本でもよく知られています。しかし、それは単なる恋愛物語をあらわすだけではなく、その背後には農耕儀礼にもとづく中国古代の信仰や、死と再生をめぐるシンボリズムがそこに含意されていました。
西王母と七夕、中国古代で生み出された物語がデザインとしてあらわされ、それが日本美術のなかにも受け継がれていく過程について、さまざまな美術品とともに迫っていきます。
第5章 神仙への憧れ、そして日本へ
前漢末期、民間では西王母への信仰が爆発的に流行したことが歴史書に記録されています。たび重なる政変や戦乱によって、旧来の社会秩序が失われていくなか、人々は心のよりどころとなる救いを求めて、西王母という女神にすがろうとしたのかもしれません。
そうした動きと呼応するかのように、後漢時代には神仙の姿を文様にあらわした鏡である神獣鏡が流行するようになります。西王母と、それに対置される男神である東王公(東王父)、あるいは伝説上の琴の名手である伯牙や、そのよき理解者である鍾子期など、神話に登場するさまざまな神仙が、その世界観にもとづいて鏡背面を飾っています。
そうした神獣鏡は、やがて日本列島にももたらされることとなりました。『魏志倭人伝』に記された卑弥呼による魏への遣使と関連づけられる三角縁神獣鏡は、古墳から出土する鏡として夙に知られています。そうしたなか、中国鏡を模倣した国産の鏡もつくられるようになり、それらもまた有力者の権威を象徴するアイテムとして重視されるようになります。
最後の章では、神仙思想と関連の深い神獣鏡と、その古代日本への影響を取り上げ、中国古代の神話とデザインの広がりをご紹介していきます。
開催概要
展覧会名 | 企画展「死と再生の物語(ナラティヴ)―中国古代の神話とデザイン―」 |
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会期 |
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会場 | 泉屋博古館東京 |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木1丁目5番地1号 Google Map |
時間 |
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休館日 |
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入館料 |
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TEL | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
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SNS | |
主催 | 公益財団法人泉屋博古館、日本経済新聞社 |
後援 | TOKYO MX、港区教育委員会 |
会期中のイベント(予定)
※全て当日の観覧券が必要になります
※予約制プログラムは5月23日(金)正午よりホームページにて受付開始予定(先着順)
1 クロストーク「中国古代の神話と星座」
日時:6月15日(日) 14:00~15:30
定員:50名(予約制*受付終了)
講師:北里麻実氏(港区立みなと科学館プラネタリウム解説員)、山本堯(泉屋博古館学芸員)
協力:港区立みなと科学館
2 「古鏡の世界に触れる──オブジェクト・ベースト・ラーニングwith KeMCo」
日時:6月24日(火)18:30~20:00
会場:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)5階実習室
東京都港区三田2-15-45
定員:20名(予約制*受付終了)
講師:
渡部葉子氏(慶應義塾大学アート・センター教授・キュレーター/慶應義塾ミュージアム・コモンズ副機構長)
本間友氏(慶應義塾ミュージアム・コモンズ准教授 / 慶應義塾大学アート・センター所員)
山本堯(泉屋博古館学芸員)
内容:オブジェクト・ベースト・ラーニング(OBL)は参加者が作品を実際に手にとり、参加者同士が対話をしながら、作品に対する理解を深めるイベントです。
このイベントでは慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)の協力のもと、センチュリー赤尾コレクションの古鏡の実物を使用します。
協力:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)
3 記念講演会「天の河を渡ること──牽牛・織女神話の意味」
日時:7月6日(日)14:00~15:30
定員:50名(予約制*受付終了)
講師:小南一郎(泉屋博古館名誉館長)
4〈アートwith〉レクチャー「包み・運び・飾る──美術品輸送の世界(仮)」
日時:7月11日(金)17:30~18:30
定員:50名(ウェブ予約制、先着順)
講師:日本通運株式会社 関東美術品支店作業員
5 スライドトーク
日時:7月5日・19日(各土) 各14:00~15:00(予約不要・当日11時より整理券配付)
講師:山本堯(泉屋博古館学芸員)
同時開催
「泉屋ビエンナーレSelection」
住友コレクションの中核をなす中国古代青銅器は、融かした金属を鋳型に流し込む技法によって創られた独特な造形美が魅力です。中国古代の高度な鋳造技術から生まれた器の複雑な形と、表面を埋め尽くす緻密で独創性に溢れる文様は、近代にいたるまで金属工芸の範とされ、その創作に大きな影響を与えてきました。また金属はその希少性はもちろんのこと、独特の輝きや色、あるいは堅牢性といった物質の特徴があり、作家は素材の性質を最大限に生かすことによって豊かな造形を切り拓いてきました。
2021年、2023年に泉屋博古館(京都・鹿ケ谷)で開催された「泉屋ビエンナーレ Re-sonationひびきあう聲」では、新たな試みとして現代の鋳金芸術の第一線で活躍する作家を招待し、当館が所蔵する約3000年前の中国古代青銅器から受けたインスピレーションをもとに制作された作品を紹介しました。本展は、はるか古代から連綿とつづく鋳金技術の現在地とその可能性を、過去2回のビエンナーレに出品された4点からご紹介します。古代青銅器が持つ普遍的な造形性と、金属という素材あるいは鋳金の技術に託された作家の感性の交わりから生まれた鋳金芸術の可能性をご覧いただきます。
広報用画像一覧
重要美術品《鴟鴞尊》中国・殷(前13-前12世紀)泉屋博古館
《鴟鴞尊》中国・前漢(前2-後1世紀) 早稲田大学會津八一記念博物館
《戈卣》中国・殷(前12-前11世紀)泉屋博古館
《蟠螭樹木文鏡》中国・前漢(前2世紀)泉屋博古館
《方格規矩四神鏡》中国・前漢末(前1世紀-後1世紀)泉屋博古館
《月兎八稜鏡》中国・唐(8世紀)泉屋博古館
重要文化財《画文帯同向式神獣鏡》中国・後漢末~三国(3世紀) 泉屋博古館
重要文化財《三角縁四神四獣鏡》中国・三国 (3世紀) 泉屋博古館
上島鳳山《十二ヶ月美人》のうち《七月 七夕》(部分)日本・明治42年(1909)泉屋博古館東京
上島鳳山《十二ヶ月美人》のうち《七月 七夕》日本・明治42年(1909)泉屋博古館東京
上島鳳山《十二ヶ月美人》のうち《八月 嫦娥》(部分)日本・明治42年(1909)泉屋博古館東京
上島鳳山《十二ヶ月美人》のうち《八月 嫦娥》日本・明治42年(1909)泉屋博古館東京
尾竹竹坡《寿老人図》日本・明治(20世紀) 泉屋博古館東京
尾竹竹坡《寿老人図》(部分)日本・明治(20世紀) 泉屋博古館東京
佐治真理子《きいてみたいこと ~Who are you?~》2021年 泉屋博古館蔵
久野彩子《time capsule》2023年 泉屋博古館蔵
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