NEW 最新リリースのご案内(5/21) バルト三国と日本の写真を比較する共同研究プロジェクト「The Humanist Link between Japan and the Baltics」研究発表のお知らせ
同展覧会では、写真が抗議を表現する媒体としてどのように機能したかを探るため、バルト三国と日本の写真を比較する共同研究プロジェクト「The Humanist Link between Japan and the Baltics」を実施し、その研究発表を行います。 (画像右:アレクサンドラス・マシアウスカス シリーズ「農村市場」より)
研究プロジェクト「The Humanist Link between Japan and the Baltics」
同プロジェクトでは、日本、リトアニア、ラトビア、エストニアからキュレーターや美術評論家を集め、エッセイを執筆しました。日本とバルト諸国は、地理的および文化的距離があるにもかかわらず、両地域の写真家は自らの芸術を通して、社会状況を記録し、批評してきました。これらの類似点を調査した結果、ヒューマニスト写真の普遍性やそれが担う役割についてより深く理解することができました。この研究を実施し、広めることで、同プロジェクトは芸術家たちの抵抗を称えるだけでなく、彼ら・彼女らの物語や貢献を忘れ去られないようにも努めています。同記事は本展公式ウェブサイトでご覧いただけます。
代表的な展示作家の紹介 カリユ・スール Kalju Suur
1928 - 2013年、エストニア出身。
タリン写真クラブ(1960年)およびフォトグループSTODOM(1964年)の創設メンバー。国際写真芸術連盟(FIAP)優秀賞受賞。彼の作品は、ポートレート、報道写真、ヌード写真など多岐にわたっており、テーマによって芸術表現が変化した。しかし、彼の自由な創造性が遺憾無く発揮されたのは、日常生活における偶発的な場面を捉えた作品である。スールは、鑑賞者が自分なりの物語を読み取れるような、素朴だが魅力的な瞬間をとらえた。彼のドキュメンタリーフォト写真は構図に制約がなく、ダイナミックである。また、スールは、ソビエトの新聞に初めてヌード写真を掲載した写真家として、歴史にその名を刻んでいる。
ゼンタ・ジヴィジンスカ Zenta Dzividzinska
1944 – 2011年、ラトビア出身。
1961年から1966年まで、当時のバウハウスに相当するリガ応用芸術学校で学ぶ。1964年、写真芸術の著名な提唱者の一人であり、フォトクラブ・リガの主要メンバーの一人であったグナーズ・ビンデの通信写真教室にも通った。ジヴィジンスカの作品は、彼女の生涯や芸術が十分に評価されなかったことから、貧弱なアーカイブを残すに至った。彼女のシリーズ作品『House by the River(川沿いの家)』は、ラトビア農村の小さな家に住む3世代の女性の日常生活を描いている。ラトビア美術界においては、フェミニズム批評が1980年代に登場するまで存在しなかったことから、今日、これらの作品はフェミニズムの概念を拡張し、独自の視点をもつという意味で、パラフェミニズム的作品と見なされている。
アルゲルダス・シャシュコス Algirdas Šeškus
1945年生まれ、リトアニア出身。
1970年代後半に展覧会活動を始めた当初、彼の作品はまるで理解されなかった。不適切な構図、過剰露光、傷だらけのネガ、歪んだフレーミングなど、「退屈の美学」と呼ばれる、明らかな平凡さ、単調さ、偽のアマチュアリズムは正当化されがたかったためである。だが、シャシュコスにとって写真は、見る者と現実を隔てる膜であり、見えるものに名前を付けるよりも、その振動に耳を傾けるべきものであった。1975年から1985年まで、彼はリトアニアテレビの撮影スタッフとして現実の「正しい」バージョンを撮影している。その一方で、そうではないバージョン、人々が出演の準備をする様子も撮影していた。その写真の中では、アナウンサー、体操選手、ダンサーたちがスタジオという人工的な時空の中で捉えられ、別の人生への憧れを発しているようにみえる。シャシュコスは画家としても活動し、前衛芸術運動にも参加していたが、1990年代初頭には芸術から離れ、そして2010年に写真集の出版を再開した。2017年にはドイツのカッセルとアテネで開催されたdocumenta14(ドクメンタ14)に参加。彼の作品は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やマドリード国立ソフィア王女美術館(Museo Nacional Reina Sofía)などの重要なパブリックコレクションに収蔵されている。
参加アーティスト(五十音順) エストニア
・アルノ・サール Arno Saar
・エネ・カルマ Ene Kärema
・カリユ・スール Kalju Suur
・ペーター・トーミング Peeter Tooming
・ペーター・ランゴヴィッツ Peeter Langovits
・ティート・ヴェルマーエ Tiit Veermäe
リトアニア
・アルギマンタス・クンチュス Algimantas Kunčius
・アルゲルダス・シャシュコス Algirdas Šeškus
・アレクサンドラス・マシアウスカス Aleksandras Macijauskas
・ビオレタ・ブベリーテ Violeta Bubelytė
・ロームアルダス・ポルジェルスキス Romualdas Požerskis